惨事郎 (2) ~黎明篇~ | 煩悩無計画学 Ⅰ

惨事郎 (2) ~黎明篇~

本日はついにZou-K大SA(スクーリングアシスタント)のヤルバイト最終日でした。

社会人の皆さん、モツカレでした。

先生も乙カレー様でした。
(ちなみに、後から知ったのですが、講義をしていたのは「建築少年」創設メンバーのう○なみって人でした。)


やっぱ三日間も10時間近くぶっ通しでCAD教えると若干病みますね。将来は絶対CADオペなんぞやりたくないぞな。
講義内容はデ・スティルとかロシア構成主義の時代の作家の平面作品を立体化するみたいな感じでした。
普通。


とはいえ、自分にとってはやや特別な三日間なのでした。

そう、例のエイドリアーノさんです。

今日は彼女の御話の続きをしましょう。

・・・


実は初日に学生に自己紹介アンケートみたいなのを書いてもらってました。その紙は自分が回収して管理していたのですが、露骨に見ちゃうと覗き見してる気分になるので、普段自分はあまりそういうのを見ないようにしています。

しかし、今日は朝ちょっと仕事に余裕があったので、気になるアノ子(エイドリアソ)の秘密のアンケートをちらりと見てしまいました。



出身地:広島
現住所:香川
職業:販売・サービス業
趣味:製菓
この講義を履修した理由:CADを使えるようになって将来は転職したい!ので、CADがスムースに使えるようにこの講義で練習したいです。



ほー、そんな遠い所から、、、スゴイモチベーションだなあ。
しかも出身地と現住所のズレ具合が結構謎ダナア。

とか思いましたが、今日こそは声をかけようと腹をくくっていた自分としては、この時点で若干嫌な予感がしました。


さて、講義も始まり、自分はSAの仕事につきました。
といっても、基本は教室の一番後ろに座って、質問があれば指導するだけなので、楽天です。イーグルス。

ちなみにエイドリアソの席は一番後ろなので、自分の席は彼女の真後ろです。

椅子に座って、何気なくエイドリアソの横の椅子に目をやると、いつもとは違った大き目のカバンが鎮座しています。




この瞬間、自分は今日の運命の哀しさをを悟りました。
嫌な予感が的中したのです。




そう、恐らく彼女はこの講義が終わると同時に、香川に帰ってしまうのです。




バカー!カスー!ショウシンモノー!だから昨日声かければ良かったのに!
と、昨日の自分を三角木馬に乗せてムチでしばき倒したくなると同時に、時間の不可逆性について思考しました。

何とかタイムマシンを発明できないものか?(今から)

2秒後に無理と悟った後は、もう後悔の渦の中をひたすら漂うのみでした。


まあでも帰るの夜かもしんないじゃん。
せめてお茶くらい一緒に行けるかも。


そんな甘い妄想を抱きつつ、もし今日声かけて上手くいった時のために、必死でデートプランニングをしてみました。
あの店でお茶をして、そしてアノ店でご飯を食べて、最後は京都駅まで送ってあげよう。

こんな打算的な考え(妄想)に突き動かされた自分は、ニヤつきながら、短い昼休みを利用して家に車をとりに帰りました。車の中を掃除して、かける音楽まで構想を練りました。
いやあ、夢は広がるなあ。


しかし。午後の二回目の休憩時間にはもう、打算で積み上げられた壁はベルリンの壁の如くガラガラと崩れ去りました。


講義の休憩時間になった時、エイドリアソはおもむろにカバンの中からCD-Rを取り出しました。
「あの、作った作品のデータを家に持って帰りたいんですけど。。」
「ああ、いいですよ。」

CDバーナーが使えるパソコンは教室に一台しかないので、自分はそこにデータを運び、早速データCDを作り始めました。

横で画面を見つめていたエイドリアソはつぶやきました。

「今日、電車が間に合わないんで、講義が終わるよりちょっと早く帰らないといけないんです。先生はあんまり良いとは言ってなかったんですけど。今日まで、ありがとうございました。」


ドゥーン!!!(心の音)



「そ、そうですか。残念ですね。。」

自分はこの時、余程いっその事今日一緒にお茶したかった旨を言ってしまおうかと思いましたが、周りに生徒(オバハン)がいたため、無愛想な挨拶をするだけになってしまいました。



そして、講義が再開され、しばらくエイドリアソの後ろ姿を眺めていた自分は、焦りとともにペンを走らせました。


手紙て。中学生かいな、アンタ。しかも生まれてこの方、御婦人に手紙なんぞ渡した事ないやろうが、畜生め。

と、自分に突っ込みを入れながらも、ここは一つ、恥ずかしさを忘れて無心に思うままを書きました。

爽やかな文章書いて、エイドリアソの事ほめて、自分が怪しくない事を遠まわしに書いて、最後にしっかりと自分のメルアドも書いて、さあ、駄文は完成です。
アアー、いと恥ずかし。


自分は渡すタイミングをはかりました。
理想としては、早めに教室を出て行くエイドリアソに、忘れ物を届けるふりをして、軽いメッセージとともに外で渡すのがベストです。


講義(というか講評会)も終盤に差し掛かり、心なしか彼女もそわそわしています。
時間、大丈夫ですか?と聞くと、六時前まで大丈夫です。と答えました。講義は一応六時十分に終わる事になってます。

しかし、予定より若干早く、講義は5時45分に終了しました。あとは、授業アンケートのみです。
皆が黙々とアンケートを書く中、エイドリアソは2分くらいでさっとアンケートを済ませました。
見守っていた自分は、じゃあ渡しておきます、と言って最大限善人ぶり、エイドリアソからアンケートを受け取りました。

エイドリアソはかなり急いでいる様子です。
そのまま荷物を整理し、カバンに筆記用具を詰め込むと、小さい声で
「じゃあ、お疲れ様でした。」
と前にいる先生と自分に挨拶し、教室を飛び出していきました。

焦る自分。

たまらなくなって、自分もトイレに行くフリをして教室を出ました。教室は三階なのですが、自分が教室を出て下を見ると、もう一階を駆けて行くエイドリアソが見えます。


早っ!


もう無理かな、と思った瞬間、
自分の心の中にいる変な人(多分偉い人)が、女々しい自分に囁きました。



追え。



それを聞いた自分は、メロスより早く走りだしました。
なんじゃこの状況は。三流青春ドラマじゃんね!
という自分の鋭い突っ込みをかわしつつ、無心に走ります。
ポケットにはさっきの手紙。


100メートルくらい走ったところで追いついて、声をかけました。
「エイドリアソさん。」

彼女は止まりましたが、明らかに急いでいてテンパった顔をしています。

「これ、さっき渡すの忘れてたんですけど。」

自分は例の恥ブツを差し出しました。

「あっ、ありがとうございます。」

恐らく、講義の書類かと思ったのでしょう。
彼女はそう言うと、挨拶をしてまた全力ダッシュで駆けていきました。



終わった。何か知らんがやり遂げた。




自分は気恥ずかしい感情も忘れ、妙にスガスガしい気分になり、教室に戻りました。
で、無事SAの残りの仕事もこなし、帰途についたという訳です。


さみしいのぅー、切ないのぅー。
23にもなって何してんだかのぅー。
女の尻を追っかけるとはこの事かのぅー。


と思いつつも、
メールくるかな、
と若干の期待を隠せないのが今の状況です。



PS.この日記に関する苦情は一切受け付けません。悪しからず。